生活習慣病とは
脳神経外科では、脳血管疾患(脳卒中)の患者さんを診療対象としていますが、その原因は動脈硬化であることがほとんどです。そして、その動脈硬化の原因は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がほとんどです。そのため当クリニックでは、脳卒中の予防の観点から、これらの生活習慣病の診療もしています。
生活習慣病とは、日頃からの乱れたライフスタイル(不規則で偏食・過食な食生活、運動不足、喫煙・多量の飲酒、ストレス など)が原因となって発症する病気の総称で、その中には、高血圧、糖尿病、脂質異常症などが含まれます。これらには共通して自覚症状が出にくいという特徴があります。放置しておくと病状を進行させやすく、無症状であっても血管は常にダメージを受け続け、やがて動脈硬化が進行し、脳卒中をきたしてしまうのです。もちろん動脈硬化は全身に起こるため、心臓の血管が細くなったり、詰まったりすれば、狭心症、心筋梗塞になりますし、手足の動脈が詰まってしまうと、指先が壊死を起こすこともあります。目の動脈が損傷すれば失明に、腎臓の血管がもろくなれば、腎不全から透析になってしまうこともあるのです。特に、脳卒中や心疾患は寝たきりの原因になる可能性が十分考えられそうなってしまってからでは遅いのです。予防しかありません。予防するには、日ごろの生活を整え、血圧、コレステロール、血糖値をしっかりコントロールすることが重要なのです。当院ではそのお手伝いをさせていただきます。
また早期発見のため、各種健診(日野市など自治体のものも)も承っております。ぜひご相談ください。
このように脳卒中は予防が肝心です。定期的に健康診断を受ける、生活習慣を見直すといったことが大切になります。当クリニックでは、生活習慣病を発症している患者さん、その予備群であると診断された方について、生活習慣病の予防や改善に効果がみられるという、食事療法や運動療法の指導のほか、薬物療法による治療なども行っています。気になる方は一度ご相談ください。
主な生活習慣病
高血圧
日本人の3人に1人の割合で患者がいると推定される病気です。血圧とは、心臓から血液が送られる際に血管壁にかかる圧力のことで、圧力が高い場合を高血圧と言います。なお、診断にあたっては2つの血圧の数値(収縮期血圧と拡張期血圧)を測定する必要があります。
収取期血圧とは心臓が収縮して血液を送り出す際の圧力のことで、血管の圧力が高くなることから最高血圧とも呼ばれます。また拡張期血圧とは、心臓が血液を取り込むために拡がっている状態のことで、血管の圧力が低くなっていることから最低血圧とも呼ばれます。外来時測定で収取期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上の数値を示していると高血圧と診断されます。ご自宅の血圧では135/85以下が目標です。なお、1回の数値だけでは判断しません。同条件下で繰り返し測定し、それでも上回る場合に診断をつけます。
血圧が慢性的に高くなることで自覚症状が現れることは、ほぼありません。そのため多くの患者さんは気づかず、場合によっては症状を進行させてしまいます。その間も心臓から余分な負荷をかけて血液は全身に送られていきます。そして血管は圧に耐えるべく、厚く、そして硬直化し、動脈硬化を招くようになります。さらに進行してしまうと最終的には、脳血管疾患(脳卒中)、心筋梗塞、腎不全、閉塞性動硬化症などになってしまうのです。
発症原因は、主に2つあると言われています。ひとつは日本人の全高血圧患者の9割以上を占めるとされる本態性高血圧です。このタイプは現時点で原因が特定されてはいませんが、不摂生な生活習慣(過食・偏食、塩分の過剰摂取、運動不足、喫煙・多量の飲酒、ストレス、肥満 など)や遺伝的要因が関係していると言われています。もう一方は二次性高血圧です。これは他の病気などが引き金となって発症する高血圧です。例えば、腎機能低下、副腎ホルモン異常、睡眠時無呼吸症候群(SAS)、などの疾患、ステロイド薬による副作用などが原因となりえます。
日頃から血圧を測定して自らの数値を把握しておきましょう。測定の値が基準より上回っていると確認できれば、その時点で医療機関に通えば、早期発見、早期治療は可能です。
糖尿病
血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことを血糖値と言いますが、この血糖値が慢性的に高い状態を糖尿病と言います。ブドウ糖は細胞に取り込まれるなどして体のエネルギー源となるわけですが、その際に膵臓から分泌されるホルモンの一種、インスリンが働くことでブドウ糖は有効利用されるようになります。ただ、何らかの原因によってこのインスリンが分泌されない、量が不足している、量があっても効きが悪いといった状態になると、ブドウ糖は消費されづらくなり、血糖値が上がったままになってしまうのです。
1型糖尿病と2型糖尿病
糖尿病は2種類に分類されます。1型糖尿病と2型糖尿病です。
1型糖尿病とは、インスリンが作られる膵臓のβ細胞が何らかの原因(自己免疫反応 など)によって破壊されてしまい、インスリンが分泌されなくなる状態です。異常な喉の渇き、多尿、体重減少、全身の倦怠感といった症状がみられ、重症化すると糖尿病ケトアシドーシスがみられることもあります。小児期や思春期に発症することもあります。
2型糖尿病は、日本人の全糖尿病患者の95%以上を占めると言われるもので、日頃からの生活の乱れ(偏食・過食、運動不足、喫煙・多量の飲酒、過剰なストレス、肥満 など)がきっかけとなってインスリンの分泌量が不足もしくはその働きが低下することで発症します。発症初期では症状はみられませんが、ある程度進行するとのどが異常にのどが渇く、多尿・頻尿、全身の疲労感、体重減少などが現れます。このように症状に気づく頃には病状は大分進んでいます。
このほか、他の病気や薬剤が原因で発症する二次性糖尿病、高血糖状態になりやすい妊娠中の女性にみられる妊娠糖尿病(完全な糖尿病ではありません)もあります。
糖尿病も自覚症状が現れにくく、放置してしまうことで病状を進行させやすくなります。高血糖の状態は血管の内皮細胞を傷つけ、やがて動脈硬化を招くようになります。血管が集中する網膜や腎臓などで合併症(糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害は糖尿病三大合併症)を起こしやすくなります。また太い血管でも動脈硬化が進行してしまうと大血管障害(脳卒中、狭心症・心筋梗塞 など)を起こしてしまいます。早期に発症に気づくには、定期的に健康診断を受診し、血糖値を確認することが大切です。
治療について
糖尿病は完治が難しいので、治療の目的は合併症を起こさないために血糖値のコントロールを行うことです。1型糖尿病では、インスリンが絶対的に不足しているので体外からインスリンを補充するインスリン注射が必要です。2型糖尿病の場合は、インスリンが分泌されている状態ではあるので、生活習慣の改善(食事療法、運動療法)から行っていき、これだけでは困難であれば併せて薬物療法(経口血糖降下薬)も行います。それでも改善しなければインスリン注射が必要です。当院では初期治療まで担当させていただき、それでも効果がない場合には糖尿病の専門医をご紹介させていただいております。インスリンの投与は行っておりません。
脂質異常症
脂質は血液中に含まれるもので、そのうちLDL(悪玉)コレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)の数値が基準値より高い、あるいはHDL(善玉)コレステロールの数値が基準値より低いと判定されると脂質異常症と診断されます。なお、脂質異常症と診断される具体的な基準につきましては次の通りで、空腹時の血液検査で確認できます。
- LDLコレステロール値≧140mg/dL(高LDLコレステロール血症)
- 中性脂肪≧150mg/dL(高トリグリセライド血症)
- HDLコレステロール値<40mg/dL(低HDLコレステロール血症)
LDLコレステロールに注意
上記の表を見てもわかるように脂質異常症は3つのタイプに分類されます。ただ動脈硬化との関連が深いとされているのはLDLコレステロールです。コレステロールも中性脂肪も体にとって欠かせないものではあるのですが、LDLコレステロールが何らかの原因によって血液中で過剰になってしまうと、血管内でこれが蓄積されるようになって、やがて動脈硬化を起こし、血管が脆くなっていきます。さらに進行すると血管狭窄や閉塞をきたします。この状態が脳の血管で起きれば脳梗塞、心臓で起きれば狭心症・心筋梗塞などの心疾患となるのです。
脂質異常症も他の生活習慣病と同様に発症後に自覚症状がほぼ現れません。そのため大半の方は健診で数値の異常を指摘されて気づくことになります。発症の原因は、主に2つあります。ひとつは、脂質異常症になりやすい体質の方が、高カロリーや高脂肪食中心の食事をする、慢性的な運動不足、喫煙・多量の飲酒といったことが組み合わさるなどして発症する原発性脂質異常症です。もうひとつは別の病気(糖尿病、甲状腺機能低下症、腎疾患 など)や薬の使用(ステロイド薬の長期使用)などによって発症する二次性脂質異常症です。
治療に関してですが、どのタイプであってもまずはLDLコレステロールの数値を下げるようにしていきます。なぜならLDLコレステロール値が動脈硬化に影響を与えやすいからです。さらにトリグリセライド(中性脂肪)値が高い場合には、また違う種類のお薬をつかってコントロールをしていくこともあります。